マーケティングリサーチはどのように役に立つの?
アメリカ・マーケティング協会(AMA)は、「マーケティングとは、消費者、顧客、パートナー、および社会全体にとって価値のある提供物を創造、伝達、流通、交換するための活動、一連の制度、およびプロセスをいう」と定義しています。その中でマーケティングリサーチの有効性とは何でしょうか。それは、鏡であること。よくわかっているつもりでも、鏡を見ることで新たに発見し驚いたことはありませんか?リサーチは市場を知る、消費者を知る、そして自らを知るために、そのままを映し出す鏡のようなものといえるでしょう。事業戦略は、自社リソースの把握と市場環境の分析から形作られますが、市場環境の理解においてリサーチの第三者機関が調査を行うことで、より客観性の高い分析ができるメリットがあります。


実際の市場調査のプロジェクトでは、こうだろうと思い込んでいたことがあっけなく打ち消されたり、なるほどという発見や気づきがあります。消費者さえも気が付いていないようなニーズに光が当たって見える瞬間があります。マーケティングリサーチは、市場の状況、消費者の考え方や反応を理解するために役に立ち、強みを生かした市場機会を逃さずとらえるための情報を提供します。また、現在はソーシャルメディアを通じた消費者からの情報の流れは増えてはいますが、それでも商品やサービスの提供者側からの情報提供は頻度もボリュームも多く、利用者、消費者側からの情報は断然少なくてアンバランスです。消費者調査は消費者からの声、フィードバックの情報提供の機会ともいえます。

マーケティングリサーチを利用する際の利用目的としては、(1)現状把握のための調査(2)仮説づくりと仮説検証のための調査(3)成果の検証のための調査に分けられます。「現状把握のための調査」とは、今の市場では何が起こっているかを理解するためのリサーチです。「仮説づくりと仮説検証のため調査」は、例えば「このような製品コンセプトにしたらよいのでは」といった仮説を作り、その仮説を検証します。「成果検証」は、実行した戦略の結果どの程度成果があったかを数量化して可視化する調査です。ある広告キャンペーンを打った際のブランド認知率などの成果指標はこれにあたります。
調査の継続性の点でみると、(1)単発調査と(2)継続調査があります。単発調査は特定の課題に対してその都度調査を実施するもので、継続調査は継続的に同じ項目の情報を収集することによって、時系列のデータの動向、変化を分析することができます。

リサーチ手法は、大きく分けて「定性調査」と「定量調査」があります。
新しいアイデアのヒントや、仮説づくりや絞り込みに適しているのは定性調査。少ない数の消費者に直接話を聞いたり行動を観察する調査で、数字では測ることのできない行動の理由や背景などを理解するのに適しています。

定量調査は、アンケートなどを通して数値化する手法で、消費実態の把握や仮説の検証、成果の検証に向いています。まずは定性調査から始めてアイデアを固めていき、絞り込んだアイデアの中から定量調査で数量的な確信を得て市場に投入というように、それぞれの課題に適した手法がそれぞれの段階で使われます。


定性調査の手法としては:
座談会は、フォーカスグループ、グループインタビュー(略してグルインともいいます)とも呼ばれ、6〜7人の消費者を集めて、1時間半から2時間のグループディスカッションをします。

インデプスインタビューは、対象者と1対1でじっくりと話を聞くインタビュー。対象者は消費者、あるいは専門知識をもつビジネス対象者の専門家インタビュー(B2Bエキスパートインタビュー)の場合もあります。

ホームビジットとは、消費者の自宅を訪問して、実際に商品がどのように使われているかなどを観察、インタビューする手法です。

エスノグラフィーは、文化人類学の研究の手法をビジネスに応用したものです。文化人類学者が未開の社会における思考や行動を理解するために、実際に人々と生活を共にして研究対象を直接観察する調査方法です。近年この手法を応用したエスノグラフィック型定性調査が、新規市場参入や開発の際に積極的に使われています。

ミステリーショッピングは、覆面調査とも呼ばれます。調査員が、店舗で通常の顧客としてサービスを受けてそれを評価し、店舗や販売スタッフのサービス改善につなげるなど、さまざまな利用方法があります。

定量調査の手法は:
訪問面接調査は、調査対象者を直接訪問して調査票の質問に答えてもらうもので、見せたい提示物がある場合に向いています。
訪問留め置き調査は、商品などを一定期間使ってもらった感想を集めるホームユーステストなどに実施されます。例えば製品開発のためのテスト品を使用してもらって反応をみる調査などです。
郵送調査は、対企業や対象にしたい地域が広い場合に対応できますが、回収率は低いので、ビジネス調査などの特定の調査に用いられます。
電話調査は、電話番号を作り無作為にコンタクトする手法で、質問数が少ない調査には向いています。
会場調査は、事前に依頼して会場にきてもらう場合と、当日会場前で調査依頼をする場合がありますが、面談形式で調査ができるので、複雑な提示物がある調査に向いています。
インターネット調査は、ネット普及率の高い国では、サンプル数が多く低予算で、調査結果がすぐに出るため飛躍的に利用されるようになりましたが、ネットユーザーだけが対象者の基本なので、新興国ではその特徴を加味して利用することが必要です。

デスクリサーチは、既にあるデータ(2次データと呼びます)で、官公庁の統計データ、企業が公開しているデータ、新聞、雑誌等の記事などを収集し分析する手法です。